第4章 Inviting Night
『あ! おかえりなさい、カカシ』
カカシが玄関のドアを開けると、パックンと仲良さそうにじゃれ合っているさきがいた。
まずは護衛対象である彼女の身に何事も無かったことにほっと胸をなで下ろす。
しかし、家の玄関先でおかえりなさいなんて言葉はいつぶりに聞いただろうか。
「あぁ、ただいま…パックンも護衛ありがとね。 もう帰っていいよ。…って、あれ?夕飯作ってくれたの?」
さきがカカシのために用意した、テーブルの上に既に並ぶ色とりどりの食事を目にして驚く。
『そ! カカシが頑張ってくれてるから、そのお礼も兼ねてね。 今日は家でこれ読んでたんよ。 やっとさっき読み終えたとこで…』
さきが指差したのは昨日借りてきたばかりの沢山の書物たち。
「そ。 お疲れさん。 ありがとねわざわざ」
『お風呂も沸いてるよ!今日は私が後でいいから、カカシゆっくり浸かってね』
「あぁ、ありがとう。」
やっぱり調子狂っちゃうな…ホント。
家に帰ったら誰かが待っていて、食事と風呂が出来ていて…
こんなことが再びオレに起こるなんて誰が想像したか。
『さ、先に食べよっ! カカシの手料理には劣るけど、頑張って作ったよ~』
背中をポスポスと押して、さきは早く椅子に座れとオレを促す。
ひと口食べた、甘めの卵焼きはオレは本当は苦手なはずで……
でも、今まで食べたことのあるどの卵焼きよりもいちばん美味かった。
さきに見られぬよう口布を外しては口へ含む作業を繰り返しながら、無意識に、「美味い」 と呟くと彼女はまた、『ま、心が込もってるからね』と、オレの心を惑わせるように明るく天真爛漫に笑った。
その様子を見て、満足したようにパックンは二人に気付かれないようそっと姿を消した。