第60章 試験官のお仕事
――――― ゾク………ッ!
『?!?!』
突然感じた、アンコに向けられた殺気に、端に避けて見ていたさきも、堪らず体が動いた。
「クナイ…お返ししますわ…」
突然。
まるで蛇のように舌が長く、中性的な面立ちの、笠を被った人物がアンコの投げ出したクナイをその舌で絡め取り、殺気をダラダラとその身から溢れかえらせたまま、切先を彼女の方を向けた。
喉の奥がツンと冷えるような緊張。
”危険”だ、と全身が反応しているようだった。
しかし、アンコもやはり手練だ。
その殺気に気付いてからは、直ぐに自身のクナイを背後に立つその人物に向けていた。
「わざわざありがと……さき、いいわ平気よ」
さきはその二人の間に手を伸ばし、クナイの鋭い先端をアンコとは逆の方を向けて立っていた。
下忍たちしかいないこの場所で、そう簡単には出せない不気味な殺気に、つい、体が動いてしまったのだ。
『…ならいいんだけど…』
アンコの目配せもあり、さきはスッとクナイをおろした。
その場にピンと張り詰めた空気が漂う。
「でもね…殺気を込めて私の後ろに立たないで。早死したくなければね…」
アンコは笑顔で先程投げたクナイを、笠の人から受け取った。