第60章 試験官のお仕事
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受験者たちをぞろぞろと引き連れたアンコ。
さきはその最後尾について歩いた。
彼女の案内でやってきたのは、今回の第二の試験会場 第44演習場…別名“ 死の森 ”だ。
第三演習場にある大樹とはまた別の、苔蒸して、ツルがあちこちへ伸び、根が剥き出しとなった底不気味な大樹が目の前に並んでいる。
森の奥は真っ暗でこちらからは何も見えず、闇といった表現がよく似合う森だ。
その不気味な会場を前にした受験生達は、各々息を飲んでいた。
「ここが死の森と呼ばれる所以…すぐ実感することになるわ」
そんな彼らに、アンコが追い打ちをかけるように脅しにかける。
アンコはそうやって受験者たちの顔色が変わるのを心底楽しんでいるようだった。
「"死の森と呼ばれる所以、すぐ実感することになるわ…"
なーんて脅してもぜんっぜんへーき!怖くないってばよ!」
この空気感の中、似ても似つかないアンコの物真似を面白おかしくやってのけるナルトは、アンコと同じく本当に怖いもの知らずだ。
アンコに張った威勢の良さも、時に人の押してはいけないボタンをも容易に押してしまうということも無邪気な彼は全く知らない。
「そう…君は元気がいいのね」
そういうなりアンコはクナイを取り出して、ナルトの頬を軽く掠めるように投げた。
(ほら、アンコの笑顔…)
『全っ然笑ってないしっ…』
もう、さきの引きつくような苦笑いも止まるタイミングを失っているような状態だ。
アンコは皮肉を込めて、ナルトくんの顔に伝う真っ赤な鮮血を舌でぺろりと舐めとった。
あーあー後でアンコに一言謝っとかなきゃ…と、そう思っていた時。