第60章 試験官のお仕事
────── バリン!!!
黒の横断幕に身を包んだアンコは、クルクルと宙返りを繰り返しながら窓を割り、風を切って室内へ勢いよく入った。
ちょうど教室のど真ん中に来るタイミングで、窓の外にいるさきの手から二本のクナイが放たれた。
カカッと高い音が鳴り、天井にしっかりとそれが刺さったことを確認してから、アンコは横断幕から体を滑らせ床へ軽やかに着地した。
『…これでいいんかな…?』
一体アンコが何がしたいのか何を目標にしているのか理解に苦しんでいたさきは、当然何が正解なのかもわからない。
ただ、どこか満足そうに口角をあげて笑う彼女の姿を見る限りでは、どうやら成功…のようだ。
「アンタ達喜んでる場合じゃないわよ!!!私は第二試験官!みたらしアンコ!!次行くわよ次ィ!!!」
アンコの威勢のいい元気な声が響き渡る。
「さー!ついてらっしゃい!!!」
さきはその様子を、近くにあった室内がちょうど見える高さの手頃な木の枝に登って眺めていた。
シーンと静まる教室内。
(あれは完全に引かれてるな。)
遂には、空気読めとイビキに囁かれるアンコ。
(ま、何となくこーなることだと思ったけどね…)