第60章 試験官のお仕事
『ねぇアンコ……ホンマにこれで行く気?』
「当たり前でしょ!アンタはクナイをしっかり投げなさいよ! 登場シーンが一番大切なんだから」
さきとアンコは、第一の試験終了を建物の外から今か今かと待っていた。
その手には昨日急遽作り上げた黒い横断幕が握りしめられている。
そこには大きく“第2試験官 みたらしアンコ 見参!!” の文字。
さきは、そう?なんて返答をしながらも、心の中で密かに反抗していた。
(なかなかヤバくない?いろんな意味で。こんなのドン引きされるに決まってんじゃん……)
このできたてホヤホヤの布に包まってアンコは窓から登場するつもりで、さきはクナイでこの横断幕を天井に固定しなくてはならない。
……なんだそれ。いる?その演出。
「きっともうそろそろよ~! ド派手にビシッとバシッとキメるわよ!」
『う、うん…やね~…』
アスマの読みは、当たっていた。
「──────…キミたちの健闘を祈る!」
「おっしゃーーーー!!祈っててー!!」
イビキが話を終え、その直後に聞きなじみのある少年の溌溂とした声が聞こえた。
この二人の声を合図に、アンコはその教室の窓へと勢いよく突っ込んで行った。
「よし、行くわよ!さき!!」
『う、うん!!』