第60章 試験官のお仕事
「…え?」
確かに忍とは秘密を取り扱う仕事だ。時には苦痛を強いられる場面もあるだろう。
(…ただ、まさか試験で拷問・尋問を行うなんてこと…)
不安げに聞き返す紅に目を向けながら、アスマは続けた。
「木の葉暗部拷問・尋問部隊隊長…特別上忍森乃イビキ!まぁ試験に肉体的な拷問はないにしても…尋問のスキルをいかした精神的な“苦しみ”を強いられてるに違いない…」
彼の尋問、拷問で口を割らない人間はそうそういない。
下忍そこそこの忍なら、その圧力と巧みな話術で一気に多数の不合格者を出すだろう。
「奴は…イビキは…人の心を知り尽くしている…そして最もアイツの恐ろしいところは、相手を心理的に追い詰めることで精神を操りいたぶり…人間の本来持つ弱みを浮き彫りにすることだ。
アイツの尋問に誤魔化しはきかない」
もしかすると自分の担当していた子たちも、ヤツの前では心が折れてサッサと帰ってくるかもしれない…。
少し気の弱いチョウジ、めんどくさがり屋のシカマルはその可能性が十分に考えられるし、いつも威勢の良いイノも‟今年は運が悪かった。また来年やれば…”なんて考えそうだ。
アスマはもちろん三人の合格を信じてはいたが、相手が相手だとそれが無茶に通じる故にあたり前に諦めかけてもいたのだ。