第60章 試験官のお仕事
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―――――― 午後五時頃、上忍待機室。
下忍の担当をしているカカシ、アスマ、紅はそこで各々好みの時間を過ごしていた。
「ま、しかし…部下達がいないとなるとヒマになるねぇ~」
カカシは飲みかけのコーヒーを置いて、猫背をさらに丸めながらどっかりとベンチに座った。
「なに…すぐ忙しくなるに決まってる」
アスマがゆっくりと煙を吐き出しながらその言葉を否定する。
(へぇ…コイツも自分トコの子にはかなり自信を持ってるはずなんだけど…)
「何で?」
アスマにしては意外な意見だな、と思ったカカシは純粋な疑問を口にした。
「今回の第一の試験官、あの森乃イビキだそうだ」
それを聞いたカカシの顔が、ほんの少し引きつった。
森乃イビキの名を聞いて、良かったなんて喜ぶ者はなかなかいない。
いるとしたら結構な変態か、振り切ったマゾヒストくらいだろう。
(まさかアイツがねぇ…こりゃ第一の試験も危ういな…)
恐らく、相当精神的に苦しめられる試験内容になっている。
下忍の彼らがそれに耐えきれる想像をする方が難しい。
彼はそれほど優秀な特別上忍なのだ。
「よりにもよってあのサディストか…」
「サディスト?」
紅が眉根を寄せ、怪訝な顔で聞き返した。
「紅…お前は新米上忍だから知らねーのも無理はねー…」
トントンと指先で煙草の灰を落としながらアスマがそれに答えた。
「……いったい何者なの?」
「プロだよ、プロ…」
「プロ?……何の…」
アスマは勿体ぶるように煙草を一口吸い、フーと長い息とともにその紫煙をゆっくりと吐き出した。
その仕草、間、空気感は彼の父である三代目火影によく似ている。
「拷問と尋問!」