第59章 見送り
とは言え、これから教え子の大事な試験だというのに、こんなに平和な時間を過ごしてても良いものだろうか。
そう思っていると、隣に座るさきが、なんだか少し申し訳なさそうな笑みを浮かべていた。
『なんかこんなゆっくりしてると、少し罪悪感感じるよね。ずっと忙しかったし…』
そう思ってたのはカカシだけではなかったようだ。
「ま!たまにはね」
するとさきは、カカシからフッと目線を外し、そこから見えるベランダの花のプランターを優しく眺めながら話し始めた。
『次、いつ、またゆっくり出来るかわからんしね…
…あのねカカシ。この中忍試験が終わったら、少し“大事な話”がしたい』
「? いいけど、今じゃないの?」
『うん。…その時はまた、私とデートしてくれる?』
彼女はベランダの方へと向けていた目をこちらに戻し、その目を細めて、外で咲いている花のような穏やかで優しい笑みを向けた。
思わぬ誘いに少し驚きはしたが、さきの方からそう言って貰えるのはオレとしては嬉しいものだ。
何の話をしたいのかは分からないけど、表情から察するにそんなに悪い話ではないだろう。
「いいよ。ちゃんと時間を作ろう」
さきはその答えに満足したらしい。
一瞬ぱっと目を見開いたかと思えば、子供のような満面の笑みで喜び、まだ立ててもいない予定を『楽しみ』だと言った。