第59章 見送り
カカシは、ここ一年の出来事を軽く脳裏に浮かべた。
一年前とは本当に環境が変わったものだ。
暗部を抜け、上忍師を任されるも、だれかを担当するわけでもなく、淡々と任務をこなしていた日々が、ある日をきっかけに急変した。
さきと出会ってからしばらくは、彼女の監視役(名目上ではあったが)だったため、否応なしに共同生活を始めた。
そして、忍として育てるために先生として関り、久方ぶりに恋をした。
里に不慣れで、まだまだ学ぶことの多かったさきは、家と演習場の往復。
時々、買い物をするためや、少ない友人たちと談笑をするために商店街に行く程度で、いつも家にいるか、自分の近くにいるイメージが強かったのだが。
あっと間に時が流れ、さきも忍として十分生計が立てられるほどに成長した。
せわしなく過ぎていく毎日に、落ち着いて話が出来て、笑いあっていた日々がどこか少し懐かしく感じる。
二人揃ってこの家にいる時間さえ、ここ一ヶ月以上は殆ど無かったではないか。
(こんな風にゆっくり話せる時間がこんなに貴重に感じるとはね。)
昨日もカカシはすぐ出かけていかなければならなかったし、今日もまた1時間もすれば、さきはアンコの所へ行かなければならなかった。