第59章 見送り
「謝る必要ないでしょ。…もしかして、あの日ぼーっとしてたのも、ずっとそれを考えてたの?」
『あ…うん。』
「…お前も馬鹿だね」
カカシは薄くため息を吐いた。
『だって、嫌でしょ?…あの時カカシがどんな表情してたのか、私には分かんない…けど、少なくともいい顔はしてないと思ってるし。』
「そりゃニコニコ見てるのもおかしいでしょ…でも、嫌とかそういうのは無いから。
…ま、深く考えすぎるなよ。オレはそれが理由で嫌になったり、さきのことを嫌ったりなんかしないよ」
『……ほんまに?』
さきは、あまり信じてない目と声色で恐るおそる確認した。
「当たり前でしょ。そんな中途半端な気持ちで、好きだの愛してるだの何度も言わないよオレも」
『………ありがとう…カカシ』
そう言ってまた、さきの顔に笑顔がもどった。
カカシもまた、それにつられて微笑む。
「この顔?お前が好きなのは」
『…そ。ふふ それが好き。』
一層嬉しそうに頬を綻ばせるさきを、カカシは愛おしそうに見つめた。
――― オレもお前の笑った顔が一番好きだよ。