第59章 見送り
―――――― あの波の国任務の帰りのこと。
三人がワイワイと話しているのを、さきはその後ろの方で聞いていた。
恐らくオレの聞き間違いではないと思うが、
“さきさんもカカシ先生をすっごく好きよねー!”
“ふふっ…そうやね”
サクラが、オレの事をさきに聞いた時、そう言っていた気がする ――――――
『どしたん?』
さきはカカシに促されるまま、素直に隣に座った。
彼女自身、特にあの時のことを気にする様子は全くない。
それでも時たま、さきはカカシに対する気持ちを正直に言葉にしていた。
波の国から帰ってきてすぐも、まるでカカシを試すような行動を取ったり、カカシの気持ちに応えるようなキスを何度も交わしたりもした。
ただ、核心に迫ることをカカシから聞くこともしなかったし、彼女が口にすることもなかった。
「いや、お前こそまあこう1年近くも、飽きさせない表情を色々見せてくれると思ってね」
『ふふ お互い様やね。もうすぐ一年か…なんか色々あったね?』
「そうだな…まさかあの出会いが、こんなに影響してくるとは思わなかったな」
『そうよね…カカシなんて怪しすぎたからね?』
「お前の方が怪しかったから連行されたんでしょ」
『ふふ 確かに!…でも良かった。あの日あそこにいたのがカカシで。』
そう、こんな風に、真っ直ぐな笑顔で正直に伝えられるさきの思い。
それにつられて、カカシも笑顔を返した。
『私ね、そのカカシの笑った顔が凄く“好き”。』
「え」
条件反射的に“好き”という言葉に反応して、カカシの表情が元に戻る。
(あぁ、確かにオレも色々表情を変えてるな。)
『あっ!今の顔やのに!戻さんといてよ!』
そう言いながら、カカシの口角をクイクイと指で持ち上げようとするさきは、やっぱり"そんな"意識はないようだ。
(逆にオレが馬鹿みたいに意識して…オレはガキか? これじゃ、かなり格好悪い。)