第59章 見送り
それはサクラのことを信用していない、というわけではない。
もし、三人全員が集まらなかったら…
(ま…それは、オレの責任だな。)
"三人揃うとは限らない。"
そこから、カカシが考えていることをなんとなく察したさきは、ウロウロとしていた足をピタリと止めて、近くの壁に寄りかかった。
『心配してるの?』
「まぁね…ま、可能性の話だよ」
『もし、全員が来なくても、それはカカシのせいじゃないよ?』
「いや、そうとも限んないでしょ。オレは上忍師って立場だしね」
『確かにね。でもさ、導く手助けをするのはカカシでも、最後に決めるのは受験権のある本人でしょう?』
「まぁねえ…」と、カカシはため息交じりに呟いた。
ソファーのひじ掛けで頬肘をつくその表情は、カカシが下忍を受け持つ前のあの頃には見なかったものだ。
カカシの好きな表情の一つが見れたさきは、クスッと小さく笑みを浮かべた。
『大丈夫!きっと来るよ。カカシもそう思ってるやろ?
サクラちゃんのことは確かに心配やけど…あの子はきっと立派なくノ一になる。』
「…だな。ま、会場の前で待つことにするよ。
アイツらのことはオレに任せて、お前は自分の持ち場のことを考えろ。」
『うん、やね。 みんなによろしく言っといてね。
あと、合格祈願も忘れずに』
「ああ」
カカシもさきも、あの三人の心配はするが、その代わり、誰よりも信じていた。
(オレ達のこの一つ一つの判断が、アイツらを成長させる後押しになればいいんだがな…)
『ふふ カカシが先生の顔してる』
「先生の顔って…いつもと変わらない普通の顔でしょ」
『そんなことないよ。カカシはカカシで色んな表情してる。 片目しか見えてなくても、私は想像できるしね』
カカシからすれば、そうやってクスクスと笑う彼女こそ、色んな表情を見せている。
真剣な顔、寂しそうな顔、強気な顔、
笑った顔、切ない顔、優しい顔、喜んだ顔…
そして、時折辛そうな顔も。
カカシは、ちょいちょいと手招きをし、自分の座っているソファに座るよう促した。
「…さき、ちょっと」
『なに?』