第59章 見送り
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翌日の、中忍選抜試験当日の朝。
『あー…一言声くらいかけてあげたいのにぃ…』
第二の試験の試験官、アンコの補佐を任されたさきは、カカシ率いる第七班の三人に会う事を禁止されている。
そのせいで、『激励の一言すらもかけれない』と部屋の中をウロウロと歩いては、ブツブツと独り言ちる。
それを何度も何度も繰り返していた。
「さき…そんなに心配しなくても、アイツらは怖いもんなしだから大じょーぶよ。」
『それは分かってるけど…』
「それに、3人揃って来るかはまだ分からないでしょ。」
今回の中忍試験は、元々スリーマンセルでしか申し込みが出来ないルールにはなっていたのだが、カカシは敢えて彼らにその説明はしなかった。
三人が己の意思で中忍選抜試験に臨み、全員揃ってアカデミーへ来ない限り、今回の受験を止めようと、さきとの話し合いで決めていたからだ。
ナルト、サスケに関しては、今回の試験をパスする理由を彼らに求める方が難しいだろう。
しかし、気になるのはサクラだ。
比較的何でも器用にこなす子だと、カカシは一目置いていたが、ここまで頑張ってきた最大の理由は、サスケの側に居たいからだろう。
(アイツは今、忍術よりも恋愛だからな…。)
受験する意思がなくても、きっとサスケに誘われれば、サクラはいい加減な気持ちのまま試験を受けようとする。
それを止めるためにも、この件は伝えるべきではない。