第4章 Inviting Night
声の元を辿って視線を下にやる。
何やら茶色の塊…それも少しもふもふとした物体が視界に映り込んだ。
……犬だ。一匹の犬がこちらを向いて座っていた。
(え?犬が……?)
さきは一瞬、 頭の中が真っ白になった。
状況をひとつずつ整理して、漸く声の主に気が付くと…
『い…いぃ犬がっっっ!!しゃべっ!っっ!!しゃべっっ…』
あまりに奇想天外な状況に、まるで凶暴な大型犬にでも出くわしたかのように後ずさりをする。
いや、相手はほんの小さなパグ犬なのだが。
その結果、おしりの横側を思いっきり椅子にぶつけてしまった。
『いったぁーーーっ…自分のサイズ分かってないやん……』
と、自虐ネタをぶちこんだところで、再び例の犬に話しかけられた。
「落ち着け。 拙者は忍犬だ。 パックンとは拙者のことだ。」
……なんともホラーな。
私が知る限り喋る犬といえば、アヒャアヒャと笑うどこぞの夢の国の犬くらいで、こんな小さな、人間も中に入れないような犬が突然こちらに話しかけてくるもんだから少々取り乱してしまった。
『忍の世界って凄いなぁ…』
改めて、頭の上から尻尾の先までマジマジとそのパックンとやらを見た。
どこから声出してるんやろ…そりゃまあ…口なんだろうけど…
「お前がさきだな?」
『あ、はい!そうです!』
「…よし、ニオイは覚えた。これから、カカシがいない間は拙者がお前を護衛する。 この里にいる限りなかなか脅威と出くわすことは無いだろうが、カカシの頼みだ。 必ず外へ行く時は拙者を連れていくようにな。」
『は、はい!パックンさん!』
勿論、犬との会話が慣れていないさきは、終始タジタジしていた。