第58章 好き
「ふっ…いつから気付いていた?流石は火遁を操ると噂の彩火師…」
敵の男は口の端を吊り上げ、肩越しに挑戦的な目を、背後のさきに向けた。
『愚問は結構。私たちを襲った目的は何?』
恐らく尾行られたのではない。
突然の襲撃だ。
さきのクナイを握る手に力が入る。
先ほどよりも近い距離…紙一重な所まで首に宛てがった。
この手を少しでも立てれば、男の首には傷が付くだろう。
「コレ、毒が塗ってあるでしょ? 傷がつくと大変なんじゃないの…?知らんけど」
さきの左手には既に用意してあった彩火玉がパチパチと音を立てていた。
もう逃げ場はどこにも無い。
すると、観念したのか雨の抜け忍は手を挙げ、降参の意思を表した。
「木の葉の里の忍を…襲撃するよう雇われた。」
『…誰に?』
「舐めてもらっても困るな。それは言えない」
『…ま、そりゃそうよね』
やはり、花ノ村から預かった巻物を狙った襲撃ではなかったようだ。
それが分かっただけでもひとまず良しとすべきか。
尋問しているさきの元に、木の葉の仲間の二人が駆け寄ってきた。
特に怪我を負った様子もない。
二人には、捉えた敵を連行するため、口に轡をはめて腕を縛るよう指示を出した。
『急いで帰りましょう…とんだ拾い物ですね…。
里に着き次第、私は火影様の元へ直ぐに向かいます。 貴方達はその人を連行して下さい。
隊列はこの人はあなたが連れて、私は前、あなたは最後尾で。』
了解、の返事を聞いてから、さき→上忍と雨の抜け忍→医療忍者の順に隊列を組む。
三人は敵を連れて、先ほどよりも速度を上げて木の葉の里へと向かった。
(この忙しい時期に面倒だな…とにかく、急いで帰らなきゃ。)
さきは更にそのスピードをあげた。