第58章 好き
『わぁっっ?!?!』
大きな風鳴りとともに弾き返される術。
さきの体も、思い切り後ろへと吹き飛ばされた。
風によって大きくなった鳳仙花の火の玉がこちらへそのまま襲い掛かる。
さきは、すかさず受身を取ってグルリと方向を転換し、タン!タン!と軽やかに足場を次々と変えて術を避けた。
相手から更に距離をとってゆく。
反対側から敵を攻撃していた木の葉の上忍は、後ろに飛んだのか、ここから姿が見えなくなっていた。
彼の安否は気になるところではあるが、こちらには医療忍者もいるため、その対応は任せられる。
仲間を巻き込む可能性がないならば、今がこちらとしては最大のチャンスだ。
『火遁 彩火 青牡丹!!』
―――――― 同じ火遁でも、これなら簡単には避けられないでしょ。
狙いを定めて放った彩火玉から、勢いよく青い彩火が咲く。
同時に、バァン!という爆発音が響いた。
ドシャァ!!
敵は地面に倒れ込んだ。
さきは、ふぅ…と軽く息を吐き、警戒しながら近くに寄る。
敵は、うぅ…と辛そうな声を上げ、こちらを見上げた……
『…動かないで。』
こちらを見上げる“影分身の敵”…の前に立つ、“影分身のさき”。
その後ろに立つ“本物の敵”…
その後ろから、“本物のさき”は、先程掴み取ったクナイを本物の敵の首に宛てがい、立っていた。