第57章 mythology
あの大樹の話から、こんな話が聞けるだなんて思ってもみなかった。
花巻一族と、木の葉のあの大樹…。
そして、"わたしのいた世界の"火ノ寺の御神木…。
―――――― どうにもさきの心はざわざわと騒いでいた。
(いや、ただの…偶然よね。)
「しかし、戦争が去った今…この村は、花巻一族が地下に残していた情報を元に、今もなんとか保たれています。
彼らの功績は本当に大きい…我々はとても感謝しているのです。」
村長は優しく微笑んで、更に一口茶を口に含んだ。
そうですか…と口にしながら、さきもすっかりぬるくなったお茶を啜った。
香り高いお茶の味が、先ほどと少し変わった気がした。
いや、私の動揺のせいか…
―――――――――― 花巻…
おぼえのあるその姓を、さきはここで耳にするとは思いもしなかった。
(本当にただの偶然だとは思うけど…)
―――――― 何だかすごく…嫌な予感がした。