第57章 mythology
「彼は、とても平和主義者でした。 戦時中も、どの里にもどの忍にも同じ様に関わり、優れた薬草や薬品を提供していて…
ちょうど、この村が…花巻一族が襲われたのは、彼がこの村を不在にしているときだったんです。
彼はその日、木の葉の里へ薬草と薬品を届けに出ていました。 彼が戻ると、村はほぼ壊滅状態。 彼の一族は、彼以外殺害され、その場にあった花巻一族の薬品は何者かに全て奪われていました。
…どこの忍がやったのかは、わかりません。しかし間違いなく忍による殺害でした。
…これはもう15年も前の話です。 あの伝説とされる話もここ何十年は目立たなかった。
それは、花巻一族が能力を使用出来る植物を手放さざるを得ないような状況になってしまったからです。
特別な植物たちを管理しようにも、各地では戦争が起きている。 木の葉の里に向かうことですらも、当時は命懸けでしたから。」
村長は一息つくために、茶をコクリと一口飲んだ。
「それに、もし仮に今も花巻一族の彼が一人生きていたとしても、もうあの能力は使えないのです…」
『え…?どうして』
そこまで静かに話を聞いていたさきも、思わず聞き返した。
「あの能力は一人では使えないのです。 複数人存在するからこそ使える能力。
植物だって生きています。 その生命力を人間が操るのですから、たった一人の力ではどうにもなりません」