第57章 mythology
この村…花ノ村には、その昔多くの一族が住んでいた。
住民たちは今住む者たちと同様、植物の知識が豊富で、その扱い方に非常に長けていた。
その中に、“花巻一族” という一族が住んでいて、花ノ村は、その一族を中心に発展していた。
花巻一族は、花ノ村の中でも特に優れた知識と経験を持っており、何より植物に対する愛情がとても深かったという。
また、彼らには特別な能力が備わっていた。
その特別な能力とは、
"特定の草花・樹木の生命力を、他の力に変える力"。
それが、木の葉の里の大樹の伝説に繋がる話であり、あの楠は花巻一族の能力が使える特別な樹木のうちのひとつだった。
花巻一族は古より、大楠の生命力を人々へと還元し、沢山の人をあらゆる形で救ってきた。
飢饉のときには食物の恵みを与え、日照りのときには何日も続く雨を降らせた。
愛する者を願わくば、その恋路を良い方向へと導いたり、病気に伏せる者を治癒の力で目覚めさせた。
… ――――――
「ですが、それはもう今となっては昔の話。 今はもう、花巻一族はここにはおりません。」
『どうして…?…亡くなられたんですか?』
「えぇ。…一人を残し、全滅しました。 あの第3次忍界大戦の時に…殺されたんです。」
『殺された…』
さきは村長の言葉を繰り返しながら眉をしかめた。
「はい。当時、20代であった青年一人だけが生き残りました。 ですが、彼の行方は今も分かっていません。もしかすると、彼ももうどこかで亡くなっているのではないかと…」
『…その男性は、どうして一人だけ助かったんですか?』
さきがそう問いかけると、村長はとても言いづらそうに顔を下げ、ポツリポツりと話し始めた。