第55章 異例発表
受験者が定まったところで、会議はお開きとなった。
さきたちも火影様より班員分の志願書を受け取り、部屋の出口へと向かう。
「さきっ!」
カカシと、志願書は前日に渡すのが良いだろうと話しつつ、二人でその場を退出しようとしていた時、さきの背後から声をかけてきたのはアンコだった。
『ん、アンコやん。…どしたの?』
さきは自分の名を呼ぶ声に足を止めて振り返った。
「実はね、今回の中忍選抜試験では、アンタにも第二の試験で私の持ち場を手伝ってもらいたいと思ってるの。
これから火影様に担当メンバーの推薦書を作成して提出しようと思うんだけど…どう?」
その思わぬ誘いに、えっ…と、と言葉が詰まった。
『えっ…と…えっ? い、いいの?私なんかで。逆に』
何言ってんのよ、とアンコは笑いながら大阪のおばちゃんよろしく空気をペシペシと叩き上げた。
「アンタだから頼むのよ! 私が試験官である以上、能力や力量に応じて仕事を割り振るのは当然でしょ? それに私たち、誰がなんと言おうと、同僚じゃない。」
そして、ニカッと明るい笑顔でグーサインを向ける。
その笑顔に、さきはフッと笑みがこぼれた。
(ほんと、優しいんやから…アンコ)
さっきカカシとイルカ先生の対立に口出しした時…私が自分の立場に少し引け目を感じていたのを感じ取ってくれていたのかな。と、さきは考える。
ニィっと歯を見せたままのアンコ。
アンコは進級の速さなどに惑わされず、また友人という色眼鏡もなしにして、さきのことを認めていた。
『…分かった!ありがとう。私で良ければ』
そう快諾すると、アンコはまたその笑顔のまま、「当たり前じゃない!また連絡するわ!」と言い、火影様の元へと向かって行った。
――― 本当に、いい仲間が私には増えている。
『ふふ 行こ、カカシ』
「ああ。ま、頑張れよさき」
『うんっ』
―――――― これも、仲間に会わせてくれたカカシのお陰だね。