第53章 月下美人 *
ゆっくり彼女に体重をかけると、それに従ってゆっくり体が沈んでいった。
二人が愛用しているベッドは固く、二人分の重みを受け止めた証拠に、ギシッと一度だけ軋んだ。
「…さき」
顔を離すと、ゾクリとするほど艶やかなさきが自分の下敷きになっていることに更に高揚してしまう自分がいた。
先程まで触れ合っていた唇は濡れ、ピンクブラウンの髪が月明りを受けて絹糸のように輝き、抹茶色の寝具を飾っている。
その生え際に吸い込まれていくように、さきの耳元に口を寄せたカカシは、
「可愛い」
低い声を響かせてから、紅潮した耳朶を口に含んだ。
『あ…っ』
カカシの舌と唇が、まるで生き物のように耳を這うたびに、ビクビクと反応する体。
思わず力が籠ってしまう手は、ギュッとシーツを握りしめていた。
(なにこれ…っこんな…)
気持いいなんて、耐えられない。