第52章 大切なこと
『……自分が…忍が、ただ国や誰かの道具であると考えるなら、それってもう、人じゃない。
自分の存在理由や場所を、ただ“強さの中だけ”に見出すのであれば、自分が道具以外として、この世に居ていい存在だと思うことは難しいと思う。
でも…私たち人には、感情がある。どんなに感情を殺しても、その器である心がある。心があるから、人は無意識にそこに存在したいの。
だから迷った時は、この二人のように、”自分を自分だと認めてくれる存在”が、必ずどこかにいるということを忘れないで。多くなくていい、たった一つだけでもいいからね。
忍の世界では、何かを叶えたり、達成するためには、力が必要。でも力をつけ、道具でい続けることが忍の目的や在り方ではないことを忘れないで。
そうして死んで行ったこの二人の“人とのして”の死に様…つまり、彼らの生き様を決して忘れないで。
…けど!いつでも何処でも感情を優先するのもダメ。
感情とルール、心と掟、自分と仲間……何が大切なのか何を優先するべきなのかを自分で判断出来るようになること。
忍者の在り方とまでは言わないけど、それでもこれが、人として、そして忍として大切なことだと私は思うよ。
三人には、それがきっと出来るとも思ってる。』
カカシは、何か言いたげな、そして意外そうな顔をしてこちらを見ていた。
サクラやサスケは、少し難しかったのだろうか、それぞれ少し考え顔を浮かべる。
そしてナルトは…
「……よし、今決めたってばよ!! オレはオレの忍道を行ってやる!!」
『…ふふ』
ナルトは、この忍世界をどう生きていくのだろうか。
さきは微かな希望と楽しみを感じ、思わず微笑んだ。
そして、その傍らでにっこりと微笑んでいるカカシのことを彼女は見逃さなかった。