第52章 大切なこと
「オイオイオイ お前ら安心しすぎ!!」
どこまでも救いようのない不快な戯言が飛び交った。
ガトーの手下どもの声だ。
親玉を殺された彼らは、弱ったカカシたちごと町を襲い、金目の物を奪うと言う。
―――――― イラァ…
さきのこめかみに、青筋がくっきりと浮き出る感覚が走った。
「カカシ先生!どかーっとやっちゃう術なんかないの?」
「無理だ!雷切に口寄せに写輪眼…チャクラを使いすぎた!」
カカシは既にスタミナ切れが近い状態だ。
頼りになるはずの強い先生にハッキリと無理と言われてしまい、流石のナルトも困惑の顔色をみせた。
そこへ、武器を持ったイナリと町の人々が橋の反対側からやってきた。
「イナリィ!!」
ナルトはイナリの姿を見つけるや否や、彼の名前を頼もしそうに大声で呼んだ。
「へへッ!ヒーローってのは遅れて登場するもんだからね!!」
逞しいイナリと、戦う気満々の町の人々の姿を見たナルトは鼓舞され、得意の影分身の術を使った。
カカシも同じく、残り僅かなチャクラを練り、はったりにはなるかと影分身の術を使った。
『待ってカカシ』
さきがそのうちの一人に声をかけた。
「…え?」
下衆なやつらに対するさきの怒りは、既に沸点に達していた。
カカシは見たこともないさきの鬼のような形相を目の当たりにして思わずたじろいだ。
『私、あいつらみたいなクズ、ホンマのホンマに嫌いやねん…あのクソみたいなやつらは私がいてもうたるわ。 一発しばいたらなけったくそ悪てしゃーないからな』
「…え?… さき? なんか言葉が…」
カカシは目をパチパチとさせて驚きこちらを見た。
が、そんなこと、今は知らん。
さきはバチバチの大阪弁でぶち切れた。
『しょうもない事ばっかりしよって、アンタらホンマ大概にせぇよ…! 火遁 彩火 彩色千輪菊!!!』
さきは彼らのいる方向に向かって術を仕掛けた。
…勿論、攻撃を当ててなどはいない。
あてるまでもなかった。
恐れをなした”くそ野郎ども”は戦うこともなく一目散に逃げていった。
「姉ちゃん…こ、怖いってばよォ…」
さきはフンと鼻息を荒くし、両手を腰に当て奴らを見送った。
(ま、こんくらいにしといたる。)