第1章 真夏の旅人
私たち2人の仕事は、この家でハンドメイドした小物をインターネットで販売すること。
そして1日数組限定でネイルアートを行う、所謂自営業なのだ。
こうして毎朝仕事場である我が家へ通ってくる彼女を迎え、朝ごはんを共に食べ、一日が始まる。
『で、今日はあやかちゃんお客さんの予約は?』
「3人入ってるよ~お昼から。 それまではハンドメイドの続きするつもり。 あ、今日はミシン借り切っていい?」
『いいよ、私はアクセサリー作ってるから。どうもネイルのお客さん増えへんのよね私。』
さきは片肘を付きながら、困ったように笑う。
「そのぶんハンドメイドで稼いでるやん! うちはネイル、さきちゃんはハンドメイド。良い役割分担じゃね? 現にうちはハンドメイド殆どあかんし、時間かかるしで品数少ないもん。」
『まぁ、そうやけどさ…』
あやかちゃんは何気なく私を元気にさせてくれるプロ。
高校生からの仲で、いつも明るく私を支えてくれる。
だから、彼女と過ごす毎日が、本当に好きなんだ。
『とりあえず、支度するね! 髪も顔もまだ作ってへんから私』
ヒラヒラと手を振りながらドレッサーの部屋へ移動する。
「はよせーよー!」
笑いながらあやかちゃんは言う。
今日もいつも通りの、毎日のうちの一日だ。
そう、思っていた。