第3章 Talking Night
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高かった日は、いつの間にか落ち、既に夕刻。
一日中、本やら巻物やらの資料を漁ったが、良い収穫は特になかった。
カカシは、自分の後ろにずっとついて歩いてる彼女を横目に確認しつつ、数名の担当の忍と作業を進めていた。
その中で、さきは恐らくとても真面目な性格であることがわかった。
昨日の写輪眼についての書物のこと……
忘れているかと思いきや、彼女の目に止まるなりサッと持ち出し、自分と共に歩きつつもそのページをめくる手は止まらない。
紙の色が変色し、埃を被ったような木の葉の里についての古い文献も、コホコホと咳をし、パタパタと手で扇ぎながらジッと真剣に読み続ける。
オレと彼女の目が合ったのも、ここに入る前だったかもしれない…
「さて…さき、今日はここまでにしよう。疲れたでしょ。」
カカシは一日中資料と格闘していた彼女を気遣い、声をかける。
『ううん、平気。 カカシこそ疲れたんちゃう? あの巻物全部読んでたんやから。』
そう柔らかく笑う彼女は、逆にカカシを気遣うように返答した。
(…なんか、調子狂うな、どーも。)
カカシと年齢の近い里のくノ一はみんな、自分を腫れ物に触るように扱うタイプか、キャーキャー一言ひとことに喚くタイプの二つに一つ。
紅やアンコのように普通に接してくる奴もたまにいるが、なかなか彼女らやさきのように話が出来る人はいなかった。
『ありがとうカカシ。』
真面目で、優しく気遣いの出来る女性。
出会ってすぐの彼女のことを、もう少し知りたいと思ってしまう自分。
さきに興味を引かれているその事実は、カカシをほんの少し不機嫌にした。
否、カカシは少し動揺していたのだ。
「別に…仕事をしただけだよ」
『…うーわ、かわいくないね』
その感情を、ひねくれた言葉で押さえ込んだ。