第3章 Talking Night
二人の歩みを、夏の風がフッと押し出し、1歩ずつ進める。
人々の声と、セミの鳴き声、ジリジリと熱い太陽と風の吹き抜ける音…
一歩前を歩くカカシの背を見ながら、さきはこの世界のことを考えていた。
目の前には、目的地である図書館が見えてきた。
さきは歩みを止め、真っ直ぐ先を見つめる。
『…もし、帰れんかったらさ、このまま』
「ん…元の世界に?」
カカシもさきの声に足を止めた。
『そ。…そしたら私…忍になってみようかな』
クルリと顔だけこちらを向いたカカシ。
驚いた表情で一瞬さきを見つめたが、すぐに笑顔になった。
「それは楽しみだな…お前は人並みにチャクラを持ってるし、あの剣の腕があれば、いい忍になれるかもね。」
忍は、生半可な気持ちでなれるものじゃないかもしれない。
でももし、仮にもし、このまま帰れないのならば、私はここで生きる意味をみつけなきゃならない。
死ぬのは、生きるのと同じように難しい。
また、生きるのも死ぬことと同じように難しい。
“この世界”で生きること。
それはきっと、“私の世界”で生きることとまた違うもののような気がしたのだ。