第43章 適材適所
「…それだけ、とは?」
カカシは嘘はついていない。
しかしそれは火影様の求めていた"カカシの本当の答え"ではなかった。
火影様は咥えていたパイプを口から離し、カカシの方へ突き出して、刺さるような真剣な眼差しを彼に向けた。
「ワシはお前の意見を求めておる。 否定などせん。 聞かせてくれんか。」
カカシはその眼差しを受け、遠慮がちに少しの間を空け、ふぅと一息ついた。
そしてこう続ける。
「さきは既に、中忍以上の忍として認められても良いと思います…。
スタミナ、チャクラ量ともに、まだまだ至らない部分もありますが、今回の試験でも分かったように、分析力や視野の広さ、実戦力、リーダーシップ、判断力など多彩な分野においてその実力は申し分ない…。
それは仲間を率いる現場指揮官クラス…所謂中忍に求められているレベルを超えているはずです。 …が、さきは当然、隊長として現場には出ていません。 これから経験を重ねていく必要があると思いますね…。
暗部としても間違いなく力は発揮できるでしょう。
しかし、彼女がそれに向いているとは思わない。 彼女が“その苦悩”を知るのは辛すぎます……… さきにはまだまだ伸びしろがある…陽の光を浴びる表の世界こそさきの力は生かされ、成長していくものとオレは思いますが…」
「うむ………そうか。」
さきは驚いた。
カカシが自分のことをこんな風に思ってくれているなんて知りもしなかったからだ。
さきはただ、カカシの背を数ヶ月ずっと追い続けて強くなろうとしてきただけだった。
自分では自分のことなんて殆ど分かってなどいないし、自負することもない。
事実、まだまだこれから強くならねばと思っていた。
さきはチラっと横目に、目線をカカシの顔へ向ける。
火影様もそのカカシの目を見据えていた。
「…よし、よく分かった。」
火影様は再びパイプを口に運び、満足気にそれをふかした。
そして、二・三口繰り返したあと、徐に立ち上がって“それ”を手にし、さきの目の前へと進まれた。