第38章 SURVIVAL
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それからずいぶん時間が流れ、恐らく既に深夜の三時頃。
時計のような明らかに時刻が分かる物は持ち込んではいけないという決まりの中、こんなに暗い森では、正確な時間さえも分からない。
空は生い茂る木々の葉に覆われ、月や星の位置もあまり分からないでいた。
そんな中、さきたちは身を潜めながら、ターゲットに攻撃を仕掛けていた。
休むことなく川に沿って前進していたさきたちの前に、川へ水を汲みに現れた三人の忍。
少し前に、この三人の存在に気付いたさきが奇襲をかけようと提案し、身を潜めていた所、本当に現れてくれたのだ。
「水遁・水あられ!」
標的である彼らには疲れている所大変申し訳ないが、作戦通りアイリが先陣を切り、俊敏に動きながら術を使った。
術自体に特別威力がある訳では無いが、全く問題ない。
むしろこの位がちょうど良い。
「いいわよ!カブトさん!」
「任せて。 水遁・水影斬!」
川の水が刃となる。
相手は深夜の突然の襲撃に動けず、マトモにカブトの術を受けた。
しかし、殺すつもりは毛頭ない。
水浸しにしただけだ。
「ククすみません。びしょ濡れにしてしまって。」
続いてさきが印を結ぶ。
『火遁・懐炉旋風!』
さきは川の中を逃げ惑う彼らの足元より少し手前を狙って術を仕掛けた。
超高温の炎と熱を川の浅瀬に加えると、水と空気のその温度差に、水がもくもくと煙幕のような蒸気を上げて蒸発した。
ただでさえ見通しが悪い暗闇の中、突然体が濡れたかと思えば、大きな炎と大量の蒸気に更に視界を奪われ、敵は滑稽に逃げ惑う。
恐怖心が煽られた彼ら三人の悲鳴がさきらの耳を刺すように響き、バシャバシャと逃げ惑う水の音は、流れる川の音よりも大きく深夜の森に響いた。
蒸気が消えてしまわないうちに、さき達は逃げ惑う敵それぞれ一人ずつに忍び寄る。
クナイを使って荷物の底に傷をつけ、中身をバラバラと落とし、直ぐに岩陰に隠れた。
「一旦逃げるぞ!」と相手方のリーダーが合図すると、彼らは川から上がって、森の中へと去っていった。
荷物の重さ分を紛らわせるため、わざとビショ濡れにしたために、自分たちの作戦には中々気付かれないはずだ。