第37章 中忍選抜試験開幕
「行ったな……」
カカシはさきがいなくなった部屋でぽつんと窓の外を眺めていた。
第七班の三人を受け持つようになって約一ヶ月。
カカシの一番最初の生徒であるさきが、中忍選抜試験に挑む事になった。
自分が一番大切で愛している女性は、初めは忍者のことも全く知らなかったのに、今では周りから見ても立派に任務をこなすくノ一だ。
さきが強くなりたいと思う理由は大きく二つ。
彼女自身の生きる道の為。
そして、オレの為。
そして彼女はどんどん強くなる。
カカシが第七班を担当するようになってからは、なかなか修行やトレーニングについてやれる時間も減った。
しかし、彼女はそれを絶対に欠かさなかった。
カカシが任務から帰宅した時、薄暗い寝室で先に眠っているさきは、相変わらずまぁまぁ寝相が悪く、布団から腕や足が投げ出されていた。
カカシは毎度それを丁寧に布団の中へ入れてやるのだが、彼女の腕や脚に施された沢山の包帯や湿布…そして先日の鈴取りが、彼女の努力を証明していた。
そのうえ、遅くに帰宅すると必ず出来てる食事と風呂。
自分と一緒にいる時には、ずっとニコニコと笑顔を浮かべて自分の話を聞いてくれる。
少し前までは毎日のように自分が彼女をみていたのに、親から巣立って行く雛鳥のように、彼女は自ら強さを求め、努力をし、そしてカカシのことを支えていた。