第37章 中忍選抜試験開幕
カカシはそんなさきに、何もしてやれていない…そう感じていた。
確かに以前よりも多忙で、なかなかゆっくりできる時間もない。
(でもま、そういう事じゃなく…オレは本当に大切なものを大切にするのが、随分下手なようだな……)
“一緒に背負わせて欲しい”
そう伝えたあの日から、もう数ヶ月が経った。
(オレはさきを、本当に支えてやれてるのか?)
カカシの口元を覆うマスクから、細く長い息が吐き出される。
“カカシを護るため”
“カカシは強いから、私も強くなりたい”
そう言って明るい笑顔を向け、どんどん力をつけて逞しくなってゆく彼女に…そして与えられるものばかり増えていくことに、カカシはやるせなさを感じていた。
(俺はこのままでいいのか? アイツに…何をしてやれる?)
「…これが恋の悩みってやつなのかねぇ……」
文字通り、柄にも無いことだが。
「カカシせんせぇーー!まだー?!」
窓を開けたベランダの下から、ナルトの大きな声がした。
顔をひょこっと出して、「もう少し待っててよ」と伝えると、ナルトは遅い遅いとジタバタ暴れ、サスケとサクラがそれを抑える。
「うーん……コイツらを育ててやることと…」
……それから、どうすれば良いのか。