第36章 手合わせ
ダッ!と、二人はほぼ同じタイミングで地を蹴った。
二人の右手には、逆手に持ったクナイが光る。
二人の距離が徐々に縮まってゆく。
『やっ…はや……っ!!』
同じタイミングで駆け出すと、やはりカカシの方がスピードが上だ。
直ぐに目の前まで迫られたさきは、先制したカカシの体術に対して防戦一方となってしまう。
ギィン! キィン!! キンッキン!!
金属の混じり合う、堅くて澄んだ鋭い音が何度も何度も響いた。
_______________ 突然、
さきの意表を突き、カカシの雷切を思わせる鋭い突き技が繰り出された。
「もらった!」
『ひゃ……』
さきはその一瞬で、攻撃をどう避けるかを考えた。
上…後ろ…しかしどちらかに飛ぶ時間などどこにも無い。
ならば左右…だがもう目の前にまで迫ったカカシの攻撃を躱せる気はしなかった。
(やられるっ!)
さきは咄嗟に、肩で股関節を真下へ勢いよく押した。
その突きをどうにか避けたくて、しゃがみ込む動作に近かった。
『わぁぁあ!!!』
悲鳴にも似た大きな声と共に、そのまま同時に後方へと両手を付く。
「なっ?!」
ビュッッ!!!!
斜めに蹴りあげたさきの足が、カカシの顎先を掠めた。
元の体制に上手く戻れずグラリと体制を大きく崩したさきは、そのまま地面にパタンと倒れ込む。
「……ふー…」
リィン…と美しい音を響かせるのは、倒れたさきの腰から獲った、カカシの手にある銀色の鈴だった。
「なんとか取らせてもらえたね」
にっこりとさきに微笑みかけながらカカシは写輪眼をしまった。
『い、今の…めちゃめちゃ怖かったぁ…』