第35章 嫉妬・挑発・ズルイヒト
カカシはさきから唇を離した。
まだ繋がっていたいのに、と二人の心を表すようにキラリと光る唾液の橋が架かる。
「……ストップ。…もうダメだから」
自分との距離を作るように、さきの肩に手を置いてグッと後ろに遠ざける。
絞り出したようなその低い声は、気持ちよさそうに閉じられていたさきの瞳を開かせた。
カカシは少し困ったような、切なげな顔を僅かに下げたあと、さきの顔を見ないまま、「ふー…」とゆっくりと深呼吸をした。
「お前ね…馬鹿でしょ。」
眉根を寄せ、まだキスの余韻さめやらぬ、熱を宿した目を彼女に見せまいと必死に理性を保つ。
しかしカカシの選んだ言葉は、再びさきをカチンとさせた。
『な!…馬鹿にした上に馬鹿ってそれっ』
「止まらなくなるから……分かって」
さきの言葉を、カカシの声が遮った。
カカシの熱が肩を通じて流れてくるかのように、さきは自分の顔がどんどん熱くなるのが分かった。
『……ご、めん…』
「いや……」
本当に自分は馬鹿だと、さきは反省した。
はっきりしない態度を取るくせに、勝手にヤキモチを妬いて、怒って、こんなことをして、まるで彼の気持ちを弄んでいるようではないか…と。
二人の間に暫くの無言の間が生まれた。