第35章 嫉妬・挑発・ズルイヒト
『優しいねカカシ…ごめん、ほんまに』
「なんで謝るの?」
謝る理由を聞かれると、さきはまた困ってしまった。
謝るのなら、はっきりせねばいけないはずなのに、それができないのは自分がズルい人間だからだ。
(ああまた私が困るせいで、カカシが困ってしまう…)
さきの胸はチクチクと痛みを増していった。
「嬉しいよ」
『え?』
「お前から求めてくれて」
カカシは少しはにかんで、彼女の頭をポンと撫でた。
あぁもう…やめて欲しい。
さきは自らの手をギュッと握りしめた。
ギュウギュウと痛む胸が痛くて切ない。
私はなんて、どこまで、都合のいい
ズルい女(ひと)なんだろう。
いつまで悩めば良いのだろう。
ここでまた謝れば、彼は無理にでも笑うだろう。
だからさきは必死に言葉を探した。
自分の今の心に嘘偽りない言葉で、カカシを困らせたり傷つけない言葉を。
『…そんなん、当たり前やん』
カカシはそんなズルいさきの言葉にも、とても嬉しそうに笑った。