第35章 嫉妬・挑発・ズルイヒト
「なら、そうだよって答えて欲しいわけ?」
違う。そうじゃない。それは……嫌だ。
『んんん…そうじゃなくて…』
「はぁ……じゃ、何を思ってて何が言いたいの?」
はっきりしないさきに、カカシは思わず溜息を零す。
嫉妬したならしたと素直に認めれば良いものを。
(そんなこと聞かんでよ…)
さきは無性に苛々としていた。
自分も、……いや、自分が一番わからないのだから。
見たくなかったし、イラッとしたし、悔しいと思ったその理由。
さきはそれを嫉妬心だと“分かって”いても“判ろう”とはしなかった。
だから代わりにこうしてやった。
『うるさいなぁ……』
その、カカシにとっても、私にとっても
誰にも見られたくないマスクの下を
見せるのは"私だけ"って言ったのは…
私にこんな感情を与えた張本人は…
『カカシがそう言ったんやからね』
口許を覆うマスクを素早く下ろして、唇と唇をチュッとくっつける。
ほんの一瞬だけのこと。
さきは顔を直ぐにパッと離して、『ザマーみろ!』とでも言いたげな顔でカカシのことを冷たく見つめた。