第35章 嫉妬・挑発・ズルイヒト
その唇が触れた瞬間、カカシは軽く目を見開いた。
何度か交わしてきたキスは、ずっと受け身だったさき。
その彼女が嫉妬心を露わにして、まるで"自分のものだ"と言うように、突然唇を押し付けてきたのだからカカシだって驚きもするだろう。
今カカシをいい気味だと見下すように見つめるさきの目は、紛れもなく昼間のカカシへと向けられていた。
そんな風に見るのなら、もっと素直になれば良いのに…カカシはそう思った。
さきの一連の行動は、カカシの心に火をつけた。
「……さっきの変化で、見た目だけじゃなくて…キスの仕方まで10歳になったの?」
そしてそのカカシの挑戦的な言葉は、次にさきの心に火をつけた。
カカシが自分以外の人と苦手な物を口にした苛立ち、美女に触れるかもしれない苛立ち、それが嫉妬であることをカカシに知らされ戸惑う自分を笑った彼への苛立ち。
それに加えて、自分からキスをしたというのにカカシは喜ぶでもなく照れるでもなく、小さく目が見開かれただけで、その後は涼しい顔をして、あくまで冷静に、そのキスが子供のようだと言ったのだ。
…カカシは私を馬鹿にしてる。 本当に。さきはそう思った。
さきはソファから立ち上がり、座っているカカシの足と足の間に自分の膝を差し入れて、カカシの肩に手をついた。
そのままグッと肩を押してカカシを背もたれに倒すと、その衝撃を吸収したクッションがバフッと弾力のある音を鳴らす。
『…そんなわけないやろ?』