第2章 Crying Night
「落ち込んでる?」
カカシは、さきの目の前にしゃがみ込み、顔を覗き込んだ。
チラと彼の様子を窺うと、その顔は風呂上がりのためか、額当てが外され、写輪眼のある左目は閉じられていた。
勿論(?)口元のマスクは外されていなかったが…
『そうよ。』
「何で?」
『カカシの対応が大人すぎて…あと…何でこんなことになってるのか分からなすぎて、なんかこう…凄く…不安で。 帰れるのかもわからんし、これから何をどう調べればいいのかも検討つかないし… 突然現れた余所者の私になんて気使わんくていいよ。 カカシには、ほんまに悪いと思ってる… ごめんね…私、怪しい上に迷惑かけてばかりで…』
さきは、顔を膝に填めてさらに小さくなった。
肩が、小刻みに震えた。
……何で私、泣いてるんだろう。
怖いのか、情けないのか、辛いのか……
“あの時の感じ”にどことなく似ているからか。
今のこの状況について行くのが、本当は精一杯だということを、深夜のこの少し重たい空気が、自身を追い詰めるように心に突きつけてきたせいで、堰き止めていた感情が涙となって溢れ出たのかもしれない。
帰りたいが、帰れない。
帰った方がいいのに、帰れないのだ。
不本意だが、間違いなくカカシには迷惑をかけているし、自分という人間を知る者は、ここには恐らく…否、確実に居ない。
さきは全く知らない土地で何もかも分からないまま過ごすことに、本当はとんでもない不安を覚えていた。