第29章 Silver Fireworks
サスケはナルトに、「昼からは三人で鈴取りするから足でまといになられないように」と言った。
理由はどうあれ、もしバレでもすれば自分も試験失格になるかもしれないというリスクを背負ってまで、腹を空かせた仲間に手を差し伸べる……人と馴合うことはしない普段のサスケのことを考えると、思いもよらない行動である。
それを見ていたサクラも、最初は大変驚いた様子だったが、彼女もサスケ同様にナルトに自分の弁当を差し出し、分け与えようとしている。
『カカシ…思いはちゃんと伝わるんよ。 カカシはきっとこの瞬間に導かれる為に苦しんだ。 だからこれからは…あの子たちを、カカシが先生として導いてあげんとアカンね』
「…そうだな……初めての合格者だ」
『良かった…カカシ…… あー!ホンマに嬉しい! たまんない…』
パクパクと嬉しそうに弁当を食べるナルト、そして順番に一口ずつ弁当を分け与えるサスケとサクラ。
まさかそんな光景が見られるだなんて思ってもみなかったさきは、なんだか涙が込み上げてきた。
そんな彼女に「なんでお前が泣くのよ」とカカシは突っ込んだが、さきにとってはそのくらい自分の事のように嬉しかった。
カカシがどんなに過去の自分を後悔しているのか…それはカカシと共に過ごしている彼女だからこそわかること。
毎日まだ薄暗い早朝にも、欠かさず慰霊碑に立ち寄っていることは、さきだってよく知っていた。
またそれがどういう意味なのかも…
『行って、カカシ』
さきは溢れそうになる涙を拭い、笑顔でカカシを送り出した。
カカシは木陰から日向へ足を踏み出し、三人の元へ向かった。