第26章 鈴取り演習 -1-
「続きが気になってね」
そんなカカシの言葉に、ナルトは遂に怒った。
アカデミーに戻すかもしれない演習だ、と自分で言っておきながら、カカシの気が今目の前に立ちはだかる自分よりも一冊の本に向いているのだから無理もない。
あまりに自分をナメた態度を取るカカシに、ナルトは「ナメるな」と叫び、カカシに果敢に掛かってゆく。
しかしカカシは例のイカガワシイ本から目を離さずに、ひょいひょいとナルトのすべての攻撃を躱し、素早く彼の背後へと回る。
何が起きたのかわからないのか、ナルトの動きが止まった。
「ナルト!アンタ死ぬわよォ!!!」
その声の主はサクラだ。
自分が隠れている場所もバレるというリスクを背負ってまで、大きな声でナルトに逃げるよう伝えてあげる…優しい彼女だからできることだ。
カカシはそんな様子を他所に、ナルトの後ろにしゃがみ込み、本を両手で包んで、虎の印に酷似した指を組んだ。
(え?何する気? 体術教えるんやなかったの?)
さきは何か忍術でも仕掛ける気なのかと戸惑う。
「木ノ葉隠れ秘伝体術奥義!!! 千年殺し~っ!!」
…カカシの両手が繰り出したのは、超強烈なカンチョーだ。
まともに食らってたから、おそらくナルトは二・三日程はその影響を引き摺るだろう。
開始から僅かしか経っていないが、ドタバタと色々なことが起きる演習だ。
さきは木陰から時々見えるカカシの顔をジッと目を凝らして見つめた。
ちょっとだけカカシが楽しそうにも見えるのは気の所為かな…と思いながら。