第1章 真夏の旅人
大きな目元の傷。
見るからに、かなり昔に出来た跡のようだが、忍の死と隣り合わせの現実を突きつけられたようで、さきは胸が少し苦しくなった。
「あんまり見ないでね」
カカシは閉じていた左目をすっと 薄く、徐々にこちらを見据えるように開いた。
『…わぁ!!…綺麗なオッドアイ…! これ、生まれつき?』
「いや。これは親友から譲り受けた瞳だよ。 なかなか厄介だから、キミのように綺麗だなんて言ってマジマジと見つめてくる輩はそうそういないよ」
はぁ…と薄い溜息をつきながらカカシは言う。
(なんで?こんな綺麗な紅、他にないでしょ。)
カラコンの発色なんかじゃない、もっと深くて重くてどこか悲しい色味の紅。
黒の三つ巴も凄く綺麗だ。
あぁ、あやかちゃんが見たら、うちもそれしたい!って言いそうやな~…なんて考えながら、暫くその瞳を見つめていた。
「はい。もーいいでしょ。おしまい」
なかなか顔の前から離れないさきに痺れを切らしたカカシは、さきの返答を待たずして紅の瞳を再び額当ての下に隠した。
『えっ、もう?』
「また今度ね。さきさんって変わってるね…ホント」
はぁ、ともう一度溜息をつく。