第1章 真夏の旅人
『カカシさん』
「カカシでいいよ」
『じゃぁ、カカシ。 次、私も質問していい?』
「答えれることならね」
『なんでそんなに顔隠してんの?顔見られるの嫌なん?』
さきが小首を傾げながら、カカシの聞きなれない関西弁で問いかける。
カカシは自身の胸がドキッと高鳴ったことに狼狽えた。
聞かれている内容ではなく、その喋り方の可愛らしさは今までに感じたことの無いものだったからだ。
「あーこれは、色々事情があってね」
そうぼやかしながら口元のマスクをふと押さえる。
『そうなん?じゃあ目は? 片目じゃ見づらいでしょ? 戦うのにそんなん不利やない? …あ、それとも…見えないとか…?』
「ちゃんと見えてるよ。 いいのいいの。戦闘中はこっちの目も使うことあるしね… ま、普段から見せるようなものじゃないからさ。」
『え…そう言われたらめっちゃ見たい』
「え」
さきは立て膝をつき、ずんずんとカカシの近くに寄る。
その下が見たいの!と顔に書いているようだった。
カカシは軽く後ずさりをするが、さきは再びキラキラと目を輝かせて見つめていた。
「はぁ…一瞬だけね」
そんな純粋な好奇心を向けられて断り切れなくなったカカシは、しぶしぶ自身の額当てを眉の上まで持ち上げた。