第23章 She turns him on...
先程の来客者によると、ナルトが三代目の保有する封印の書を盗み出し逃走しているとのことだ。
その巻物の奪還とナルトの捕獲の為、これから緊急で出られる上忍を...と、カカシの住む部屋に来たらしい。
カカシはひとまず三代目の元へと急いだ。
火影室では、既に三代目がナルトの様子を伺っており、イルカ先生が対処していることを知らされた。
また、この事件に関する真の犯人についても。
確かに巻物を盗み、逃走していたのは紛れもないナルトだった...しかしそう仕向けたのは、里の中忍であり、アカデミー教師のミズキだ。
つまり、ナルトはミズキに利用されたのだ。
おまけにナルトについての“秘密”...彼の中に封印されている九尾の妖狐の話を、ミズキは暴露してしまった。
絶望感に苛まれていたナルト...しかしそんな彼をイルカ先生が守り、救って、卒業を認めた......そんなところだ。
「...我々の出る幕は無さそうですね」
「そうだな。夜中にすまんかった。 無事、今年のアカデミー生は“全員揃って”卒業じゃ。 明日の集合時間には遅れて来るでないぞカカシよ。」
「は...」
あまり良い予感はしなかった。
が、オレの試験に初めて合格出来る者は今年は現れるのか......一体誰を受け持つことになるのか...と、ほんの少しの淡い期待と、“それ以外の複雑な思い”を胸に、カカシは火影室を後にした。
三代目火影様は、そんなカカシのことを長年ずっと気にかけていた。
またさきと出会い、共に暮らすこの約半年の間に、カカシの心や表情が随分と変化してきたことにも気付いていた。
(彼女の影響はとても大きい。 そして明日の班発表は、カカシをまたと無い試練の道へ導くものになるかもしれないが...これもまたカカシの為よ...)
火影様はいつものごとくパイプの煙を肺の深くまで吸い込み、ふぅ...と長く息を吐く。
優しい笑みを浮かべた彼は、里の親心をもって明日の資料にナルトの情報を追加したのだった。