第23章 She turns him on...
ガターーーンと風呂場の方からリビングにまで響く大きな音。
「え? 何、今の。…転んだ?」
カカシがいつもの様にベッドの上で読書をしていたところ、風呂に入ってもう一時間以上も姿を見せないさきがいるであろう場所からすごい物音が聞こえてきた。
慌ててその手を止めて脱衣場のドアの前へ行き、「大丈夫か~」と声をかけると『いたぁーーいぃ……』と間抜けな返事が返ってきた。
あ、転けたのねやっぱし…と察したが、でも万が一裸だと困るから(カカシが)特に何もせずドアの反対側で様子を伺うことにした。
「何してんの?ご近所迷惑になるよ?」
『転けた…』
「知ってる」
『のぼせた…』
「だろうね」
『わぁ 血ぃついた』
「へぇそうなの…… え、血? 大丈夫か?」
カカシはいつものごとく、鈍くさい彼女のすることだ...と適当に流して聞いていたら血が出たとの事。
どこからと問うと激しくぶつけたおでこから流血しているらしく、「何してんの全く」と呆れ半ばにリビングのソファの辺りに救急セットの用意をした。
「とりあえずおでこ見るから、服着て」
『大丈夫着てる』
「じゃ開けるぞ」
カカシはしかと確認をしてからドアを開けた。
「…あーあーもう何してる…」
脱衣所の中はタオルやら寝間着類やらが綺麗にひっくり返されていて、それらの中に埋もれるようにして倒れている、顔と脚が真っ赤な茹でダコ状態のさきがいた。
おでこにはたんこぶとそこから滲む赤い血。
カカシは『ごめん…』と謝る彼女に、「はいはい」と適当に返事しつつホカホカのさきを手早く抱えてリビングの方へ連れていった。
「あつ…」
衣服ごしに、熱と、汗ばむ肌と、早い心拍音と、脱力感が伝わる。
洗いたてのさきの体は、驚く程に柔らかい。
未だ寒さを残すこの季節に、身体からほわほわと湯気を立たせ、シャンプーやボディーソープの甘い香りを纏う彼女は、まるで出来たての菓子のようだ。
「さきも女なんだから…自分のせいで顔に傷つけるのは流石にダメでしょ…」
カカシは芯から温まって血流の良くなった彼女のおでこに清潔なガーゼを宛がい、なかなか止まらない血を抑えながら叱った。