第20章 輪廻祭とクリスマス
「疲れたろ。 先に風呂、入っておいで。」
『えっいいの? 宿探してくれたんやし、カカシが先に入っていいよ?』
「いいから。 な? 早く入らないと夕飯用意してくれるみたいじゃない」
ニコっと優しく微笑むカカシに促され、さきは有難くお言葉に甘えて一番風呂を頂いた。
交代するようにカカシも風呂に入り、ちょうど部屋に戻った頃合で、食事が部屋に通された。
白米、味噌汁、漬物、青菜のお浸し、鶏肉と卵の煮物。
クリスマスの煌びやかで豪華な料理と比べると、確かに華がないのは否めないが、温かなご老婦の手料理は御馳走そのもの。
心も腹も満たされる。
「...この地域もクマスリスがあるのかな」
『え、なんで?』
「だってほら...チキンが入ってる...」
箸で手羽元肉を摘み上げ、しげしげとそれを見るカカシ。
...なんか色々間違ってるけど、凄くそれが可愛く思えたさきは、思わずぷっと吹き出し笑った。
『ふ、ふふふ...そうかもね!』
本当のクリスマスを知らない男は、何が面白いのかとキョトンとした顔でもぐもぐと口を動かしている。
箸には先ほどの手羽元の骨だけが残っていた。
あのデートの夜以来、家ではマスクを下げているカカシを見ることも増えていた。
しかし、今回は一応仕事先。
マスクを安易に外すことの無いカカシの見事な早業である。
さきは、それすらなんだかとても楽しく思えてきて、ああこんなイヴも悪くないな...と温かい味噌汁を口に運んだ。