第20章 輪廻祭とクリスマス
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早朝からずっと走り続け、任務を遂行し、日がすっかり沈んだ頃、二人は漸く小さな町に辿り着いた。
「今日はここに泊まろうか」
カカシがとってくれた宿は、町の隅の方にある、小柄で背中の丸い優しそうなご老婦が一人で営んでいる小さな宿だった。
年の暮れが近付いているからか、中心部付近の宿はどこも宿泊者で満室だったのだ。
「風呂は既に沸いております。 タオルと浴衣はそこに...それから、お食事も簡単な物ではございますが、後ほどお部屋にお持ちします。 何も大したものはありませんが、ごゆるりとお過ごしください。」
『どうもありがとう、御婆様。』
ゆっくりと丁寧なご老婦の案内で、カカシとさきの二人は二階の奥の部屋に通された。
入口からこの部屋に着くまで、他の部屋からは何の音も気配もしなかったことから、他の宿泊者はいないことが容易に伺えた。
部屋の入り口の襖を開けると、そこは二人で寝るには申し分の無い六畳一間のちいさな部屋だった。
畳まれた布団が二組隅の方に重ねられていて、窓の障子は所々穴が空いている。
その窓から入り込むすきま風の音がヒューと鳴り、ゆらゆらと天井から垂れた照明の紐が揺れていた。
畳には幾つか染みがあり、お世辞にも快適な良い宿...とは言えないが、体の疲れを癒すには壁天井と毛布さえあれば、それはどんな場所であっても有難い。