第20章 輪廻祭とクリスマス
『“サンタさん”はプレゼントを贈る人の総称みたいなもの。 寝てる間に起きてるその不思議な現象を、より楽しく特別な物にする為に白い口ひげを生やした真っ赤な衣装の可愛いおじさんがイメージとしてはあるんだけどね。 だから、煙突がなくても、戸締りをしてても、サンタさんは誰のとこにでも来てくれるの。』
「成程ね。 本当に“サンタ”ってオジサンが一人いたら、もう今頃大忙しだよねえ。 プレゼントの用意に住所の確認...ああ侵入経路も確認しないと」
『アハハ! そうやね! ま、大抵サンタさんの正体は“家族の誰か”なんやけど、子どもたちは純粋やから、サンタさんは存在するって本気で信じてるし、大人は信じさせるの』
「ふーん。 その夢を壊さないように、バレないようにプレゼントを贈るってこと」
『そ!』
カカシは「ふむ」と本を持つ手と逆の手を顎にやり、長い人差し指と親指でその顎先を摘んだ。
「輪廻祭...が似てるかもな」
『輪廻祭?』
今度はカカシに代わって、さきが聞き慣れない言葉に首を傾げる。
「この里の年末の祭典だ。 憧れの人や大切な家族、思い思いの人にプレゼントを渡したり...ああ...確かそれも25日だったかな? 杉の木で編んだリースや鉢を飾ったりして、街も煌びやかになるんだ。」
『へえー!まるでクリスマスやね!』
「ま! オレはそんな飾りつけしたことも無いし、そもそも輪廻祭を過ごした事は生憎一度もないんだけど」
幼い頃から忍として生きる仕事人間のカカシは、まるで興味がないような口振りで、再び怪しげな本に目線を落とす。
「じゃ、今年は輪廻祭に参加しようよ!」
さきは座っていたソファーから勢いよく立ち上がり、カカシの方へ向かって歩きだした。
彼の手にあるその本を、パタムと両手で無理矢理閉じて、『ねっ!』と笑顔を向けると、カカシは眉を下げて「え〜」と面倒臭そうな長〜い声を黒いマスクの中に零した。
「輪廻祭ねぇ......クリスマスなら経験してみたいような気もするけど...」
『似たようなもんじゃない! 御馳走食べて、一緒にプレゼント交換するだけ! ね、しよっ?』
「うーん...」
歯切れの悪い生返事にさきが口を尖らせて、むぅと不満気な顔をしてると、「ハイハイ、分かったよ」と大きな手がポスポス頭に乗せられた。