第14章 THE DAY -2-
突然、暖かい何かがさきを丸ごと包んだ。
「なにしてんの!!」
目の色を変えたカカシが、自分の目の前にいた。
......あれ?こんな寒い中で座ってたもんやから幻覚でも見え始めたかな...なんて、涙で滲む目をぱちぱちと瞬かせる。
「雪だらけ。 お前何時からここにいた?一人で一体何やってるの? ...聞いてる?」
カカシはパサパサと頭に被った白い雪を払い落とし、濡れて絡まった細い髪を指で梳く。
『......え、カカシ...?......こそ。 ...な、にしてんの? ...任務は?』
「終わったよ。たまたま近くにいて、どこかで見かけた髪の色だと思ってここへ来てみたら...雪だるまみたいになってるお前がいた。 ほら、早くちゃんと前留めて着て。 びしょ濡れでしょ、風邪引く。」
暖かい何かの正体は、カカシのクリーム色の外套だった。
『......っにしゅうかん...たっ...てない.....よおっ』
その外套から香る、カカシの匂い。
今自分の目の前に居るのは、間違いなく本物のカカシだ。
こんな弱い自分を見られてしまった。
涙と鼻水と雪のせいで顔も髪も服もぐちゃぐちゃだ。
こんなカッコ悪い姿、見られたくなかったのに...と、一瞬止まりかけてた涙がまた零れ落ちる。
なんなんだ本当に。 話が違う。
「ごめんごめん。 お前を驚かせようと思って嘘ついてたの。 悪かったから、泣くな。」
カカシはあたふたとしながら冷たい指でさきの頬を伝う涙を拭う。
「どうした?辛いことでもあったか?」
優しく低く甘い声で囁くように、泣き続けているさきに尋ねた。
『今日...は......命日...で.........それで』
そこまで言った時、さきはカカシに抱きしめられた。
「あぁそうなんだ。 聞いて悪かった。」
全てを理解したかのように、それ以上を話させなかった。
「大丈夫。 オレがいる。」
...貴方と出会ったあの日の夜と同じ言葉...
...暖かい貴方の胸の中...
...私にはそれだけでじゅうぶんだった...
『...あり...がとう』