第9章 Drunk Sweetie
さく、さく、さく と薄く積もった雪を踏みしめる音がシンと静まった夜に響く。
『はぁ......は......待って...カカシ』
人気のない所まできて漸く気が抜けたのか、さきは隠し続けていた酔いが回ってきたようだった。
「全く......オレの目は欺けないよ。 お前途中からホントはベロベロだったでしょ? 無理して飲まなくてよかったのに。」
カカシはピタリと歩みを止め、手を握ったままさきの顔を見る。
『癖なんよ...みんなに気使われたくないから気を張るの......いつもお店出ると酔いが回って...』
きっと楽しかったんだろう...「そっか」とカカシは苦笑した。
それで、雰囲気も壊したくなかっただろうし、なにより酒のせいにして人前で気を抜きたくないという彼女の精神力の強さで酔いを隠してやり過ごせていたのだろう。
「歩けるか?」
『うん...大丈夫。 ちょっとふわふわしてるけど...ゆっくり着いてくね......』
酒に酔ったさきをカカシが見るのは初めてのことだったが、彼女の顔は耳までもが真っ赤に染まり、その紅潮はコートの襟元から覗く首から体の方にまで広がっていた。
握っていた手も、雪を踏みしめる足もヘロヘロになっていて、力は殆ど入っていなかった。
(アンコと紅はさきに尋問気味だったし...だいぶ飲まされたんだろうな。)
彼女の眼許はうるうると潤んでおり、酒によって上昇した熱い体温を逃がすように白い息を吐いている。
修行後のように歩けなくは無さそうだが、なんだか可哀想になってきた。