第36章 ぶかぶかシャツ 東リベ 三ツ谷隆 ほのぼの
あの日の約束、覚えてる?
36.ぶかぶかシャツ
記憶の中の彼女は、
いつもぶかぶかの服を着ていた。
どう見ても物理的に大きすぎる服だったが
コンパクトな短パンや細身のデニムと
合わせたその格好は彼女によく似合っていた。
周りの女子みたいに
スカートを履いたり、ヒラヒラのワンピースを着たり
しないのか。と聞いたことはあるが
兄ちゃんから、もらうんだよ。
それに、こっちの方が動きやすくて
好きかな。
とはニッコリ笑った。
「三ツ谷ー!今日、部活?」
中学になっても、それは変わらず、
兄から譲り受けたと言うオーバーサイズのシャツに
学校指定のスカートを短く折り畳んではいていた。
「いや、今日は行かねぇかな。」
「やった。じゃあ、一緒にかえろ!」
手芸部の後輩に
部長は、先輩と
付き合ってるんですか?
と、聞かれるくらいには、一緒にいるけれど
残念ながら俺たちは付き合ってない。
部活にも入っていないの事を
何故知っているのかと聞くと、
ぶかぶかのシャツ着てる先輩。
カッコイイって女子の中で人気なんです。
後輩は不思議そうな顔をして、
有名ですよ?と付け足した。
まさか、女子から好かれるように
なってるとは思ってもいなかった。
「三ツ谷? 何、そんな難しい顔してんの?」
俺が持っていたクレープに
カプリとかじりつきながら、
が俺の顔を覗き込んできた。
人の気も知らずに呑気なやつ。
「なんでもねぇ。どうでもいいけど、
口の周りつけすぎ。」
ごまかすように笑いながら
の口の端についた生クリームを指で拭って
ペロリと舐めると、彼女は楽しそうに笑った。
「三ツ谷は、眉間に皺寄せてるより、
楽しそうにしてる方がカッコイイよ。」