第35章 泣いているのを押さえつけて 東リベ 三途春千夜 シリアスめ
傷つける方法しか知らなくて
35.泣いているのを押さえつけて
「千夜・・お願い。」
ポロポロと涙を流しながら、
俺に懇願するさん。
あぁ、いい眺め。
ソファにおさえつけた彼女の体。
頭の上にまとめておさえている手首は
簡単にポキッと折れそうなほどに細い。
「イヤです。」
開いている手でマスクを外して、
その辺に投げ捨てた。
彼女の甘い香水の香りが濃くなり
酔いそうになる。
この甘い香りが俺に絡まってさんが
俺から離れられないようになればいいのに。
なんて、バカげた事を思った。
「さん、俺を選べよ。」
貴女を泣かせないと、約束するから。
すでに泣いている彼女に言うのも
ズレているだろうか。
返事を聞く前に
吸い寄せられるように彼女の首筋に顔をうずめる。
ピクリと震えた小さな体を
やっぱり愛しいと思った。
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さんは
恋愛してないと死ぬんじゃないか?と思うくらい、
常に誰かのものだった。
はじめて出会ったのは学校の屋上。
うずくまって泣いていたのがさんで
正直、めんどくせぇと思ったから
教室に戻ろうとしたのに
彼女は、ちょっと聞いて。と話し始める。
テキトーに合槌をうっていたら、
「どう思う?」
なんて、上目遣いで聞かれて
めんどくせぇ女だと思ったのが第一印象。
それが何回か続いて、
そのうち放課後を一緒に過ごしたり
お互いの家を行き来するようになった。
『千夜ー!聞いてよ!』
電話がかかってきたり、
家を突撃されたりもしょっちゅうで
めんどうだと思いつつも、
彼女を待っていた自分もいる。
ソファの隅でうずくまり
泣き疲れて眠ってしまったさんを見て
この人は俺がいなくなったら、どうするんだろう
と思った時、彼女の魅力がわかった気がした。
「さん、俺にしろよ。」
呟いた言葉は、
返事がくることもなく、静かに消えた。