第5章 波乱の揺れ
泣きながら「嫌い」とローを追い出したあと、テントの中に籠城していたは落ち着くと不安になってきた。
(どうしよう……一人でいるの怖い)
停電が続いているので、明かりはテントの中に吊るした懐中電灯の小さな光だけ。何の音もしなくてとても静かだ。
テントの中に映る自分の影さえ大きく揺れて、クマのぬいぐるみを抱いて気にしないようにしていても、なんだかひどく心細い。
(コラさんと船長さんと一緒にいたい……)
怖いので誰かと一緒にいたかった。
でもローのそばに行くのも不安だ。また丸め込まれてキスされてしまう。
(船長さんのそばに行くのは嫌。女たらしだしキス魔だしウソつきだし……)
まだ口の中を舐められた感触が残っていて、思い出すと心臓発作で死にそうになる。うっかりキスしてもいいと言ったのはだが、あれはキスじゃないと思う。少なくともはあんなの全然まったくこれっぽっちも想像していなかった。
しばらくテントの中で悩んだ末、はそっとリビングに向かった。リビングのドアが少しだけ開いているので、そこから二人の会話が聞こえる。人の声が聞こえるだけで、安心感は桁違いだった。
コラソンはローをお説教しているようで、もっと言ってほしいと密かにはエールを送った。
女の子を泣かしちゃダメだとコラソンは力説しているが、ローは生返事だ。全然反省していないらしい。
「嫌いって言われたの、どうやって撤回してもらおうかな」
ローの声音は心底楽しそうだった。またキス地獄に落とされて、やめてほしければ嫌い発言を撤回してと求められる未来しか見えない。
コラソンも完全にお手上げになっている。
(またあんなキスされるのは嫌……っ)
どうしようとうろたえていたら、ローがに気付いた。